My Life Between Silicon Valley and Japan - 「ライブドアの技術の話」と「技術指向の経営」について

備忘。

リンク: My Life Between Silicon Valley and Japan - 「ライブドアの技術の話」と「技術指向の経営」について.

伊藤直也(id:naoya)の「ライブドア技術の話」

http://d.hatena.ne.jp/naoya/20060127/1138329840

が話題になっているようなので、少し補足をしておきたい。

日本ライブドア報道を直接見聞きしているわけではないので、正確なところはよくわからないが、

今回のライブドアの件で、「ライブドア虚業」、とか「日本のネット企業は心を改めて技術を磨け」みたいな論調を良く見かけるわけですが

という書き出しで始まっているので、ネット事業について何も知らない人が、テレビ等で勝手なことを色々と言っているのだろうことは想像がつく。

まず、「ライブドア技術の話」について、彼が書いている内容は100%正しい。

ただ、ライブドアがこうした確かな技術を持っているということと、ライブドア経営陣が技術に対して深い関心を抱き「技術指向の経営」を行っていたかということは、全くの独立事象である。

企業戦略と技術の関係について議論する場合、その企業が「高い技術」を有しているか否かということ以上に、その「高い技術」が果たして「基盤技術」にすぎないのか、それとも「戦略技術」たり得るのか、ということがより重要である。

「粉飾したかどうか」とかそういうこととは別問題として、ライブドア経営陣は、少なくともある時期以降、自社の成長を、M&Aと提携戦略とブランド戦略(堀江ブランド)を軸に、スピード速く展開しようとした。自社が有する「高い技術」は、それを支える「基盤技術」として位置づけた。誰も持ち得ない「戦略技術」を開発し、それで道を切り開こうとする「技術指向の経営」ではなかった。

しかし洋の東西を問わず、eBayもYahoo!もAmazonも含め、ネット企業というのはコンシューマー向けサービス事業という性格を色濃く持つので、ごく普通の経営を指向すると自然に「技術の位置づけ」はそういうもの、つまり「基盤技術」的性格を持つようになる。米ネットバブル崩壊前のネット企業群、つまり90年代半ばに生まれた老舗ネット企業群は数年前まで皆そうだった。

その概念をひっくり返したのがグーグルだった。

グーグルは明らかに「戦略技術」の開発を最優先事項とする会社として登場した。ネット産業界の突然変異だった。だから最初は皆、グーグルが何をやっているのか、何を目指しているのか、全くわからなかった。しかし2002年頃からグーグルの台頭が誰の目にもはっきりとわかるようになり、それに刺激された米ネット列強は「基盤技術」だけでなく「戦略技術」を持つことの重要性をようやく認識した。しかし残念ながら、ライブドアを含む日本のネット列強はそうではなかった。そして今もそういう状況が続いている。