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経済財政諮問会議竹中総務相毎日新聞社説を批判

経済財政諮問会議では、竹中総務相と民間議員の吉川教授が名目成長率を巡ってバトルになっているのですが、ログを読むと竹中氏が毎日新聞社説の「名目金利は名目成長率にインフレ率を足したものである」という説明をムチャクチャな議論と名指しで批判。

なおかつ、日本の専門家の間に混乱があると、ハーバード大学のマンキュー教授の論文を根拠に反論。小泉首相は「 今日は経済学の教室に出たようで、勉強になった。」と発言。

少し長くなって恐縮だが、あと2、3分だけ、名目成長率と名目金利の議論が混乱しているように思うので、ぜひ整理をさせていただきたい。

この問題に関して、世間の関心は大変高まっているわけだが、専門的な知識を欠いた混乱した議論が、とりわけジャーナリズムで見られるのが大変気になる。例えば、先般の毎日新聞の社説だが、「名目金利は名目成長率にインフレ率を足したものである」と書いてある。無茶苦茶な議論だ。この諮問会議の議論が注目されているため整理をしたいと思うが、我々が考えなければいけないのは3つだと思う。

1つ目は、長期的なファクトとして、名目成長率と名目国債金利の関係はどうなったのかという問題。2つ目は、理論的に何か確立された考え方はあるのかということ。3つ目は、当面どうなっていくか、我々の政策でどう考えるかということ。この3点だと思う。

では、まず長期的なファクトはどうかについて。私が経済財政政策担当大臣をしていた時のアメリカのCEA委員長で、今、ハーバード大学教授のマンキューという有名な経済学者がいる。マンキューがCEAに入る前に、「デフィシット ギャンブル」という大変有名な論文を書いているが、その中でマンキューは過去120 年、過去70 年、過去50 年のアメリカの国債金利と名目成長率の関係を整理している。答えは簡単で、過去120 年の場合も、70 年の場合も、50 年の場合も、いずれも成長率が国債金利を上回っている。ミシュキンが、国際的な比較を行っているが、他の主要国についても、成長率の方が金利より高かったということを明らかにしている。

では、日本はどうなのか。実は、この問題は、質問主意書民主党から問われたことがある。それに対して閣議決定を経て、政府答弁書で書いているのは何かというと、我が国の状況を国際通貨基金の国際金融統計を用いて、名目成長率と名目金利の両者の比較が可能な1966 年から2003 年までの平均で見ると、名目金利の方が名目成長率を下回っている。つまり、日本においても歴史的なファクトとして成長率の方が高いということになっている。アメリカも他の主要国も日本も、成長率の方が名目金利より高かったというのは、ファクトだと思う。

では、理論的にはどうなのか。この点で日本の専門家の間に混乱があるように思われる。通常、経済学者が引用するのは、経済成長理論において、いわゆる長期均衡の定常状態では名目金利が名目成長率を上回るということ。しかし、重要なのは、この際の金利というのは、民間の金利であって、いわゆる国債金利ではない。民間の金利より国債金利の方が低いわけだから、この長期の理論をそのまま国債の金利と成長率に当てはめるのは間違っている。少なくとも私の知る限り、いわゆる成長理論から名目成長率と名目国債金利の関係について確立された考え方はないというのが基本的な見方なのではないかと思う。

平成18年第2回 経済財政諮問会議議事録

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/0201/shimon-s.pdf