サブプライムローン問題(1)

 サブプライムローン問題を発端にした世界経済の混乱にはまだ収拾の確証は見えない。色々な報道やブログでの情報のまとめの域を出ないが、少しまとめて見たい。

 米国経済のスローダウンについて、日本が90年代に陥ったような長時間の低迷は、米国が健全な経済政策を取ることによって回避出来るとの考え方が米国では主流の様だ。そこで言われるのは、日本が回復のために時間をかけすぎたことで、現に、今回米国は既に1.25%も金利を引き下げているとしている。
 バーナンキFRB議長は、かつて2003年に東京でおこなった講演で、より過激な金融政策や、金融政策と財政政策の連携の必要性を説いたが、先週木曜日にブッシュ政権が発表した1680億ドルの経済刺激策はその具体例だということなのだろう。しかし、米国でも、今回のような税金の戻しや税額控除は、将来世代の負担になると指摘する向きもあるようだ(マンキュー教授)。
 また、今回の住宅市場の落ち込みについて、都市部では2001年11月末比で不動産価格が約80%上昇したが、現時点ではそこから10%程度の下落にとどまっており、この後の下落幅も10-15%程度との見方が多く、日本の経験した不動産価格低迷に比べると程度が軽いとされている。日本では、1985-1991年に不動産価格がほぼ3倍になり、それが次の14年間で元に戻った。従って、日本の不動産価格は20年以上前のレベルより少し高い程度に下がってしまっており、日本の深刻度が遙かに強いとされる。
 しかし、金融緩和をどんどん進めることのできる環境にあるわけではないことも事実。エネルギーや穀物価格の上昇が一つ。加えて、中国によるインフレ輸出を指摘する声もある。これは人民元高だけではなく、輸出リベートを中国が廃止したことで値上げにつながっているというもの。先進各国にとってはここ数年中国に求めてきたことが実現したといえなくもないが、インフレを輸入している面があることに注意が必要だ。スタグフレーション到来の危険性。

 さて、サブプライムローン問題で主要金融機関の資本が大きく毀損しているが、日本で指摘される公的資金導入の必要性に対して、米国ではまだまだ議論が分かれているようだ。その中で言われるのはスピードの必要性で、今回G7出席のため来日したポールソンもそれを強調しているようだ。
 しかし、これまで米国の金融機関や投資銀行に合計400-600億ドルの資本注入を約束したソブリンウエルスファンド(SWF)が、今後も資本注入の要請に無条件に応じることはなかろうとの指摘がされている。SWFにとっては、第一に、エネルギー、穀物、商品や、製造業への投資の方が魅力的であり、今回は特に要請を受けたために金融機関の資本注入をおこなっただけであり、第二に、金融機関に投資するにしても直接ではなく、PEF(プライベート・エクイティ・ファンド)経由の投資の方が魅力的であると言われる。そういえば、昨今、JC Pennyへの投資を表明したSWFもあった。この流れが本格化すると大きな変化が生じるとする向きもある。
 噂として、大手投資銀行で、実際の評価価格が下がっていることをしりつつモーゲージ債の価格を膨らませていたとして司直が調査しているとの噂がある。そもそも、住宅価格の低迷や焦げつきの発生で、一般大衆の憤懣が高まっている可能性があり、これがデモとか集団行動といった形で具体化する危険性を指摘する向きがある。