榊原英資さん「世界信用崩壊 砕けるニッポン」

文藝春秋3月号

日本の土地バブル崩壊がはじけたのは、貸し手である銀行側の資金に限りがあったため。大蔵省が、不動産向け貸出額を抑える、いわゆる総量規制をおこなったことで、投資家への新たな資金供給が滞った。これに対して、今回のサブプライム・ローンについては銀行側の資金に限界がなかった。証券化の商法が米国の各金融機関で一般化されていため。「債券転がし」
本来、金融の世界における信用は、中央銀行にしか作り出せないはずのものだったが、全世界的なマネーの膨脹を背景に、あらゆる種類の債権をもとに、一般の金融機関が信用創造をおこなうことができるようになった。
さらに、金融工学の技術により、リスクの高い債権は分割、細分化され、あちこちの金融商品の一部としてその中に溶け込んでしまった。単体では非常にリスクが高く手を出しにくい金融商品であっても複雑な金融商品に仕立てることで市場に流通し、結果的には多くの金融機関がサブプライム・ローン絡みのハイリスク商品に手を出していた。

信用創造に結びつけた分析に注目。

米国中心のシステムは次第に機能しなくなっていく。対抗軸は欧州、中国、インドあたり。
今のままでは強力な政府系ファンドを作ることは難しい。そもともそういったファンド運用といった戦略を描く部署が国のどこにもない。日本輸出入銀行はかつて日本の海外経済戦略の重要な部分を担っていたが、今は政府系金融機関統合の中でその機能を弱めている。
国家戦略の強化については、公務員制度を大幅に変更し、官民の交流を飛躍的に高めることによってより緊張感のある行政が実現される必要。天下り規制を撤廃し欧米のような「行為規制」を導入する。省庁の大整理をおこなうことも考えられる。抜本的な地方分権によって文部科学省、国土交通省、厚生労働省は廃止できる。経済省も環境省と一体化。
中長期的には、頼みの綱の技術力の面でも中国やインドに抜かれてしまう危険が十分ある。
本当の意味での改革を始める最後のチャンスをのがしてはならない。

最後の結び。民主党による政権交代に希望をつなぐ記述。