坂野潤治・大野健一 明治維新1858-1881 世界市場希有な「革命」を捉え直す

目を見開かされた。きっかけは、数年前に読んだ大野健一氏の開発経済関係の書籍をもう一度きちんと読んでおこうというものだったが、その過程でこの新書に行き当たる。メモをしっかり取りたいが、今日は冒頭部分のメモ。

1.明治革命の柔構造

  • 東アジア型開発独裁の特徴としては(1)内外機器への対応を契機として成立、(2)強力なリーダー(3)リーダーを支える忠実で有能なエリート集団、(4)開発イデオロギーの最優先(政治改革の後回し)、(5)民主的手続きではなく経済成果に基づく正当化、(6)同一体制の継続(20-30年程度)とそれがもたらす社会の内的変容。
  • しかし、明治革命と共通するのは(1)のみ。
  • 明治革命は、(1)複数の目標-大きくわければ「富国強兵」と「公議輿論」の2目標、細かく分ければ、富国、強兵、議会、憲法の4目標の並立的競合、(2)リーダー間の合従連衡、(3)リーダーあtちによる目標の優先順位の自由な変更を通じて達成された。目標やリーダーも固定的ではなく変遷と発展がみられた。
  • 明治革命の柔構造=「指導者自身の可変性と多義性に関わる柔構造」。
  • 指導者に率いられる集団の結束が固く、かつ集団内で安定的な地域を獲得していることが前提。
  • 明治維新は、(1)下級武士だけの革命ではなく有力藩主層も見識、指導力、柔軟性においても、優秀な下級武士に劣らなかった。(2)少数のリーダーとそれを支える多数のエリート層という形でのプレーヤー間の分離はあまり明確ではない(3)藩が、サムライたちによる政治的柔構造を実現するための条件を準備した。藩の存在は極めて重要。