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<茂木健一郎>第5回 「食」を楽しむことで若さを保つ
飽食の時代と言われながら、一方でグルメブームも定着した感のある現在。脳科学の最先端研究の視点から、様々な「食」のエッセイをまとめた『食のクオリア』(青土社刊)の著者・茂木健一郎さんに、人間にとって本質的な「食」の現象学について語ってもらった。
時代は、新しい発想や創造性を求めています。創造性は、側頭葉に蓄えられた体験と前頭葉でつくられる意欲の掛け算で決まるんですよ。
従来、若者は創造性があると言われていましたが、経験というのはお年寄りのほうがあるわけです。現代は、意欲的な年配の方も多く、岡本太郎さんのように年をとっても意欲的な人が最強の生き物でしょうね。
「食」の官能というのは、生きていく意欲を維持する上で、大切だと思いますね。必要なことは、人がおいしいというものや値段が高いものではなくて、自分の官能性を満たしてくれるものです。自分で探すものなんですね。
「食」の官能を楽しむことによって、脳の情動系も、欲望の中枢である前頭葉も活性化します。「食」の欲望に目覚めることは脳のトレーニングにもなります。前頭葉を刺激することが、若さを保つ秘訣ではないでしょうか。
これからの時代、60代や70代で引退するような時代じゃないですからね。例えフルタイムで働くことがなくても、ごく普通に社会参加ができる時代だと思います。人生80年、90年時代において、「食」を充実させるのは大きな意味を持っています。「食」を通して自分を若々しく保ち、創造的に人とコミュニケーションすることを目指してほしいですね。