有機リン剤の毒性メカニズム での新聞記事

2月10日の毎日新聞 中毒餃子の農薬 今後症状出る人も は丁寧な解説記事だと思う。科学欄に載っている。神経が刺激を受けると神経伝達物質アセチルコリンが生じるが、伝達後はこれをコリンエステラーゼが分解するが、有機リン剤(農薬は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤の3種類に分かれるが、殺虫剤には有機リン剤、カーバメート系、ピレスロイド系などがある。有機リン剤は中毒症状が重い。)はこの働きを阻害する。で、殺虫剤は、農作物に害を与えずに虫だけを駆除するというものだが、虫の神経の仕組みはヒトなど哺乳類もほぼ同じとのこと。

アセチルコリンは、神経の末端に蓄積して神経が刺激を受けたままになり、腹痛や下痢などの消化器症状、呼吸困難、全身のけいれんやまひなど、さまざまな中毒症状を示す。ところがこれら中毒症状は発現が比較的早く回復も早いが、厄介なのは、最初の発症から2-3週間後に運動神経の障害が現れることがあることらしい。

一般の報道でもこういった点についての解説をして欲しいと思う。とても良心的な解説で好感を抱く。

さらにこの記事は進んで、中国製冷凍餃子で混入がおきた原因を少し分析。

第一の推測は、「事故」。残留農薬と考えると非常に高い濃度が必要だが、人為的に混入しようとすると神業的な微量であり、また、厚手の手袋などをして作業してしないと本人が中毒を起こすという。しかし、過去に殺虫剤を保管した倉庫や輸送トラックの床に殺虫剤が残り、段ボールや袋を浸透して混入すると考えることは可能だという。

第二の推測は、殺虫剤が袋を浸透するのは難しいとして、人為的混入の可能性を指摘するもの。メタミドホスは、専門家でないと思いつかない。しかし、いたずらとして、瓶から振りかければ、製品の保管状況次第で、今回のような残留濃度になることは、十分考えられるという。

今回の事件の原因を考える上で貴重な視点を提供してくれていると思う。