故郷で元気になる

松井秀喜選手は毎年根上町の実家に帰るだけではなく色々な行事に参加したり母校を訪問したりして過ごす。これは、ご両親をはじめ親戚縁者、友人、恩師の皆さんに会う、生まれ育った場所にお返しをする、といった作用以外に、松井選手に、力を与えているのではないかと思う。イチロー選手も同じように実家に戻っているようだ。

これは「基地と戦場」(京極純一氏)で展開される京極さんの説明を思い出させる。「明治維新以後、立身出世が門戸開放され、生存競争のなかで優勝して、富貴権勢を手にすることが正当な制度となった。出世をめざす人生行路を描くと、(立身出世という今来の神が憑依して)「志」を立てた人(元気人間)が、あるいは一門郷党の輿望を担って(氏神、祖霊の霊能に支援されて)歓送され、あるいは夜陰に紛れて出奔し、町場、市街地の競争の戦場に到着する。やがて、個人本位、個人リスクの激烈な生存競争のなかで人々は疲労し、その元気(霊力)は減衰する。人々は帰郷休息して故郷の自然と人情に触れ、元気(霊力)を回復して戦場に復帰する。氏神、祖霊のカバーする郷里は元気(霊力)の補給基地である。こうして、基地と戦場を幾度となく往復する生存競争のなかで、多くの人々が挫折するが、何人かは成功者となり、故郷に錦を飾る。多額の寄付は故郷の社寺、学校に様々な形で成功者の名前を留め、記念碑と銅像はその功業を後世に伝える。」(京極純一「日本の政治」p.195)

むろん松井もイチローも成功者。でも多かれ少なかれ故郷に帰って多くの人が元気を得ているはずだ。私もその一人。でも親も年老いた。