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地上最強「カビ毒」アフラトキシンの恐怖

【サラリーマンを襲う病気】
 「少しぐらいなら…」と、カビの部分だけを取り除いて食べることは絶対にやめるべきだ。この季節に繁殖するカビは“地上最強の発がん性物質”といわれるカビ毒を作る可能性がある。その恐ろしさを研究者に聞いた。(2005.06.27掲載)

【輸入食品から検出】
 世界がん研究財団や国立がんセンターが示すがん予防の食生活条項は「カビに注意」を掲げる。とくに有名なのが、天然物質の中で最も強力な発がん性物質といわれるカビ毒『アフラトキシン』だ。
 このカビ毒が発見されたキッカケは1960年に英国で起きた10万羽の七面鳥の大量死事件。調査の結果、このカビ毒に汚染されたエサを食べたことによる急性中毒死と分かり、世界的に注目を浴びた。
 主に高温多湿地域から輸入されるナッツ類、トウモロコシ、穀物などや加工品、家畜飼料などの農作物が汚染される可能性があり、日本でもエサに混入したアフラトキシンにより、養殖ニジマスに肝がんが発生し問題になったことがある。 
 現在、多くの国がアフラトキシンを規制対象にしていて、日本では食品衛生法で全食品につき10ppb(1億分の1の濃度)未満でなければならない決まりがある。
 今年4−5月分の輸入食品の中から中国産のハト麦とピーナツ製品、米国産のクルミと乾燥いちじく、イラン産のピスタチオ、インド産の唐辛子から規定値を超えるアフラトキシンを検出、最近では今月上旬にベネズエラ産のカカオ豆から見つかり、廃棄などを命ぜられた。

【夏カビは要注意】
 日本産の農作物がこのようなカビ毒に汚染されないのはなぜか。千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志助教授は、「収穫時期の違い」を挙げてこう説明する。
 「アフラトキシンを産生するカビの中でもよく知られるアスペルギルス・フラバスは東南アジアと比べれば量は少ないが、国内の土壌にも生息しまする。アフラトキシン産生に適した温度は25―30度だが、日本の穀物やナッツ類の収穫時期の秋は低温で比較的湿度も低いため、そのカビがあまり繁殖せず、アフラトキシンを作るほどにならない。ただ夏季に、穀物が汚染されれば、アフラトキシンを産生する可能性は十分あります」
 日本では管理やメーカーの検査体制が厳重なのでカビに汚染された食品が流通する心配は少ないが、発展途上国でのアフラトキシン汚染は深刻だ。東京都衛生局のHPでもアフラトキシンの人に対する急性中毒例として、74年にインドで肝炎のために106人の死者が出た事件などを挙げる。慢性中毒については、タイ、フィリピン、南アフリカ、ケニアなどで、肝がん発生率とアフラトキシン摂取量との間に関連性があるという疫学調査の報告を伝えている。
 「海外では、汚染された食品を知らないうちに日常的に摂取している例があり、このこととがん発生率の高さの関連が推定されている。カビが生えたものを大量に食べるとは考えにくく、分からないような微量を長期にわたって摂取することが問題です」(矢口助教授)。

【生えた食品は捨てる】
 カビ毒は、通常の調理や加工の温度(100度)、時間(60分)では、完全に分解できないのが怖いところ。矢口助教授は「カビが生えていない部分でもカビ毒が染み込んでいることがある。カビが生えたものを部分的に食べたり、調理することも避けてください」と警告する。
 発がん性のあるカビ毒は他にもある。正直なところカビ毒について、すべてが解明されているわけではないという。
 「パツリン、トリコテセン類というカビ毒に対しても日本には規制値があるが、まだ数種類に規制値の設定が求められている。とくにオクラトキシンというカビ毒は蓄積性があるといわれるので、例えば長期にわたってこのカビ毒に汚染されたコーヒーを飲み続ければがんになる可能性はある。早急にその対策が必要なのです」