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2012年 (これは京都議定書の期限、でもあるわけですが) までの、米国での「バイオマスエタノール 2,800万Kl」だって、それを米国産のトウモロコシだけで達成しようとすれば、そんなにスムースには行かない。国内の飼料価格が騰がる、とか、輸出制限 (これは日本への影響大) とか、大豆農家がトウモロコシに転換 (これも日本への影響大) とか、何らかの Trade-Off があって初めて達成可能、という気もします。(ありうるシナリオとしては、米国内か、他国かは別として、エタノール用に吸い上げられる農業生産をカバーするために、CO2 の吸収能力と蓄積の大きい林地を切り拓いて新たな農地を、というのもある。これは、CO2 バランスとしては、最悪のシナリオ) サトウキビの方は、比較的 Trade-Off の少ない増産が可能だと思いますが、Trade-Off が少ない、を前提にすれば、今の五倍も十倍も、は、考えられない。既存の農産物からのバイオマスエタノールでの、「ガソリン添加 (代替)」は、12年まで、と考えると、1億Kl だって難しそうで、仮に 1億Kl 出来て、それを全て米国の自動車用ガソリン添加に注ぎ込むとしても、精々米国の現状のガソリン消費の 20% (燃費ベース。容積ベースで言えば、もう少し多くなる) に過ぎません。

じゃあバイオマスエタノールなんて駄目駄目じゃないか、は、必ずしもそうではありません。限界がある、Trade-Off がある、のは (既に利用されている) 農産物を原料としたバイオマスアルコールだから、で、もし、本格的な「代替」が可能だとすれば、同じ植物産物でも、その「食用部分」(である澱粉や糖質) 起源ではなく、「未利用部分」(であるセルロースやリグニン。木質と言いたくなるのですが、別に木本だけではなく、草本にもいくらでも含まれています。ハイカラに言えばソフトバイオマス) 起源なら、大きな展開があり得ます。例えば、これは、本田技研さんが RITE さんと共同でやっておられる研究に関するリリースですが、うまくまとまっていると思います。Honda さんが、「ソフトバイオマス」を本命と考えておられるのはよく分かりますね。自動車屋さんにしてみれば CO2 排出問題にせよ、「化石燃料はいつかはなくなる」にせよ、将来の自動車の「一つの本命」(もう一つの本命は電気の利用) はエタノールエンジン、は自明です。しかし、現状の「農産物からのエタノール」だけでは、量的に見て、とても「エタノールエンジン」の時代が来るとは考えられません。(エタノールを添加したガソリン、は、添加量にもよりますが、容量比 20% 程度なら、まあ「ガソリンエンジン」です)

Honda さんが、すでに単味のエタノールエンジン (単味ではなく 80% エタノールとかの、エタノールリッチな混合燃料かも知れないが) に何らかの技術的な自信を持って居られたとしても、ソフトバイオマスエタノールが実用化されて、世の中の Major な自動車用燃料が単味のエタノールに移行する、という「量的な裏付け」がなければ、それは「宝の持ち腐れ」です。それを実現しようとすれば、まずソフトバイオマスエタノールの技術が先だろう、と、考えておられるとすれば、ワクワクしますね。そこまでのことはなくても、本気でエタノールエンジンやるとすれば、大前提は「エタノールの供給」であり、そこの最先端研究に実際に関与していないと、見るべきモノが見えてこない、好むと好まざるに関わらず、「自分でも」ソフトバイオマス利用の研究を進める、は避けて通れないのでしょうから、やるんなら本気でやるぞ、は、さすがは Honda さんだと心強い思いです。

( Dec 22 2006, 08:56:31 AM JST ) Permalink Comments [0]