見えてきた中国のコーン純輸入国への転換|Klug クルーク

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原油価格の高騰を受けてコーンやサトウキビが燃料資源として注目が高まり、これらの農産物の燃料資源としての消費量が増加した結果、農産物の価格がボトムアップしています。

 そのうち、バイオ燃料の原料としての注目が最も集まっているコーンの場合、取引規模が世界最大であるため世界的な指標とされているシカゴ商品取引所における中心限月の価格(終値)は、12月26日時点で388ドル。前年同時期の215.5ドルに比べるとおよそ80%の上昇率を記録しています。このようにバイオ・エタノール生産のための原料としての需要が増加した結果コーン価格が上昇する減少は、様々な国で見受けられます。

 なかでも、その動向が顕著なのが中国です。中国国家統計局が今月10日に発表した11月の国内CPI(消費者物価指数)は事前予測の1.5%の成長を上回る1.9%となっていますが、非食料品価格の成長が1%前後にとどまる一方、食料品価格は3.7%の上昇を記録し、予想以上のCPI上昇の一因となりました。

 また、続いて中国人民銀行が発表した11月のPPI(卸売物価指数)では、総合では前年同月比で4.1%の上昇とされましたが、原油価格が3.3%の低下を記録する一方、穀類価格が前年同月比で5.1%、前月比で1.6%の上昇が明らかとされるなど、穀類価格の上昇がより顕著に表れています。

 このように穀類価格の上昇がインフレに対する警戒感を強めるなか、中国政府間では食用コーンの価格を安定化させるためにバイオ・エタノール生産用としてのコーン消費を抑制するべき、との見解が浮上し始めているようです。

 これまで中国政府は、自動車保有台数の増加が牽引役となってエネルギー消費量が増加の一途を辿るなかで増加する石油輸入量の軽減を図るために、バイオ・エタノールの生産に力を入れていました。

 その結果、2005年度のバイオ・エタノール生産用としてのコーン消費量は総生産量の6%に当たる890万トンに達したほか、バイオ・エタノールの年間生産量は102万トンと、ブラジル、米国に次ぐ世界第三位の生産国となりました。それだけに、エタノール生産を主導してきた政府内でコーンを原料としたエタノール生産抑制を求める声が上がることは、中国政府自身がコーン価格の上昇を強く懸念していることを示していると考えられます。

 特に、これまで積極的にコーンを原料としたエタノール生産が推進されたことも一因となってコーン期末在庫量が1998年度末の1億2,887万トンを境に減少に転じ、今年度末には3,335万トンまで落ち込む(共に米国農務省による発表)ことが見込まれていることは、不作となった場合にはコーン価格が急激に上昇するリスクが高まっていることを意味しています。

 今年1月〜11月間、中国のコーン輸出量は前年同時期に比べて67.5%と大幅に減少し260万トン前後にとどまりました。その一方でこの間の輸入量はおよそ6万トンとなっています。この量は輸入量としては限定的ではあるものの、増加率でみると実に34倍に達しているのです。

 これまで政府主導の下、自給率100%前後を維持していたばかりか、純輸出国の地位を保っていた中国。生産量が年々増加しているにもかかわらず、増加する国内の食用需要を受けて輸出量と在庫量が共に減少している現状、そして食料用コーンの価格上昇を抑えるために政府内でエタノール生産用コーン消費の抑制を求める声が上がっている状況からは、同国がコーン輸入国に転じる日が近づいたことが推測されます。

平山順(ひらやま・じゅん)氏
中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。
現在主任研究員。商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。