アジア通貨危機10年

日経新聞の経済教室に、昨日は内海孚さん、今日は伊藤隆敏さんが寄稿。伊藤さんのは、アジア通貨危機検証について、最近の海外識者、研究者との議論の成果もふまえた、読み応えのあるもの。特に最後の、IMFの果たすべき役割として(存在意義とかかれているが)、各国のマクロ経済政策が世界的、地域的に中期的に維持できるようなサーベイランスに重点を置くべき、という部分は、IMFに対する明確な政策提言だと思う。

日経の日本、タイのスワップ協定が増額されたとの記事だが、財務省のプレスリリースを読んで、集団的発動手続きの条項が含まれたところまで言及して欲しかったところ。

一面のYEN漂流の記事、円高恐怖症の呪縛という見出しは何だろう?「日本に世界の投資や人材を呼び込み円を使ってもらう開国をちゅうちょしたからだ。」というのはこの記者の皆さんの総意なのだろうか。

円の国際化についてはむしろ旧大蔵省、現財務省はその推進エンジン。円高が怖くて円の国際化を遅らせたという部分は最初はあったかもしれないが90年代後半以降はほとんどないと思う。また「円の国際化は挫折した」というのもどうだろうか。巨大なローカル経済やローカル金融市場があるとそれ以上のものを求めなくなり、危機感が薄れること、初期段階(80年代後半)では金融政策執行面への考慮から日本銀行が慎重だった面もある。このあたりは、前に中国への提言の形でまとめたことがあるが、本当に円の国際化を考える人達からみると、もう少し深掘りして、具体的なアイディアを列挙して欲しいところだと思う。円の国際化に距離を置く向きほど個別具体的な点についてあまり知らないということがままある。