岩崎育夫「アジア二都物語」を読んで

アジア二都とは副題にもあるようにシンガポールと香港。香港で勤務していた頃を思い起こしながら楽しく読んだ。歴史的な説明に加えて最近の両都市の変化が具体的に鮮やかに描かれているのが印象的。著者はもともとシンガポール華人社会の専門家でおられるようだが、研究者の手になる本とは思えない現実との近接感が魅力。岩崎さんというのはどのような方なのだろう。お会いしてみたいと思う。

しかし、

この次に書くのは、シンガポールと香港をテーマにした本にしよう(途中略)と決めたのが2005年6月頃のことである。出版社の当てはなにもないが、それは後で探せばよい、とにかく書き上げるのが先決だ、と自分に言い聞かせ、2005年秋に執筆を開始した。

というのは、なかなか出来るようで出来ない話だと思う。で、出版社が決まる前に自費で現地に出かけて資料、情報を入手されている。

そういえば、私も香港駐在時、単身赴任で時間があったこともあるが、香港の歴史を読もうと、本屋で色々入手し、片端から読んだ覚えがある。大した量ではないが、その過程で、英語の本を読むのが苦痛ではなくなってきた。身近なことで興味を持つことであれば、言葉の壁はそんなに低くないと感じた。日本語のガイドブックや香港の歴史を扱ったものにすぐ飽きてしまったこともあるけれども。そういった色々なことが、本書を読み進むにつれて思い出されてきた。

金融にテーマを絞って、東アジア各国を素描するような本も、あってもいいかもしれないと思う。