弊害大きい空港外資規制

伊藤隆敏教授による経済教室寄稿。副題は オープン化に逆行 成田の民営化、拙速は禁物

外国企業が日本への投資に関心を持つには、日本市場が外国企業の参入を歓迎していることを説得的に示す必要。むろん、市場の失敗を防ぐ仕組みや規制は必要でし、国家安全保障に関する規制も残す必要。ポイントとしては、(1)内外無差別、(2)予見可能性(規制の変更に合理性があり、予測が可能であること)、(3)国際的調和の3点。
空港民営化でえは、安全保障上の懸念と、独占的であるために経済に影響を及ぼす懸念を区別して議論する必要。前者については、外資規制では対処できない。有効なのは1社で保有できる株の上限の規制である。これであれば(1)が確保される。外国の空港保有携帯には、イ.完全民営化し既に外国の会社の支配下にあるもの(ロンドン他数空港)、ロ.外資規制付きで民営化したもの、それに、ハ.国か地方自治体が所有管理しているかあるいは民営化しても過半の株を持ち続けているもの。国交省の提案は成田をハからロに移そうという物だが、ロは内外無差別に反する。当面ハのままいる方が良い。羽田は、もともと民間会社で滑走路などは国が保有している。国交省提案はイからロに移そうというものだが、既に2割弱をマッコーリーが保有しており、ここで外資規制を導入するのは「後出しじゃんけん」との批判。滑走とや離着陸の運営、出入国管理、セキュリティー関連施設は国が所有、管理することで対応できるのでは。外資規制や大口規制なしに完全民営化を維持するのも一案だろう。

空港外資規制の議論が高まっているが、単に東京市場や日本に対するイメージの問題だけではなく、成田、羽田の実情をふまえた対案を示している点で、意義深い寄稿ではないだろうか。

伊藤隆敏教授は、今週発売の週刊東洋経済ではEPA関連での農業問題で登場しておられる。本来は政治家がもっと前面にでるべきところ、経済学者にお世話にならざるを得ないという状況だが、極めて建設的な議論だと思う。