地方銀行を取り巻く環境と対応

インタビューを受ける機会があったので、このタイトルで少し考える機会があった。

日本の地方銀行は、ここにきて、堅実経営で盤石の備えを見せる優良な先を別にすると、色々模索を続けているように思える。その中で、サブプライム関連の証券化商品や、さらに不動産投資信託を含め証券化商品保有に伴う損失を計上するなどして苦しむ先、また最近になって不動産、建設業界関係で不良債権が増加し収益を圧迫している先などが複数見られる。もともとこういった損失は相当規模に上ることが多く、中小規模の金融機関では体力一杯の対応を強いられるケースが少なくない。

そもそも日本の地方銀行は、規制金利下では、趨勢的に余剰資金を、短資会社あるいは系統金融機関経由短期金融市場で運用し、リスク対比では比較的高いリターンを享受してきた。この仕組みが変化したのは、1987-89年に大きく進んだ金利自由化であり、その結果、低リスクの安定的な資金運用先を失った地方銀行の中には、もともと増やしていたノンバンク向けの融資をさらに伸ばし、その結果結局不良債権増加に苦しむところも現れた。

しかし、平成金融恐慌がとりあえずメガバンクの再編で小休止状態になったあとも、地方銀行の再編はそのごく一部が具体化しただけで、まだまだ本格的な動きはこれからと見るのが一般的だったと思う。そこへ、今回の証券化商品購入絡みでの損失報道が相次いだ。損失を被ったところをみると、バブル崩壊時代に不良債権増加で苦労したところというよりは、むしろその頃は大きな傷を負わずに生き残ったが、ここにきて再び増加する預金に対して融資が追いつかずやむを得ず生じた余剰資金を充てていた先が多いようだ。池田銀行滝野川信金などはそういう例だろう。建設、不動産関係では、地方銀行が支えきれる規模を越えている先も多いように思われる。真柄建設に経営トップを送り込んだばかりの北國銀行は同社の破綻を黙過せざるを得なかった。

地方銀行を取り巻く経営環境は引き続き厳しいと思うが、その中でも優良経営を続けている先はあるが、いったいどうすれば良いのだろう。

教科書的な答えは、

(1)融資に頼らず、手数料収入を増やすべく、投資信託販売、外国為替業務の取り扱い強化。足利銀行野村グループという後ろ盾を得たので証券関係ビジネスでは強みを持とう。外国為替業務では、三菱東京UFJ銀行に加え、アジアに強い欧米系銀行との提携を進める動きもある。

(2)リレバンを推進し、融資ビジネスの収益性を高めること。リレバン自体がなかなか実現容易ではなく、かえって旧来型の担保徴求型の融資に傾く可能性を持つが、特に中小企業については総合的な取引関係のほとんどを担当することで金融機関のクレジットリスクが減少するというアイディア自体には問題はない。要は、融資システム、リスク管理さらにはその監督のありかたがこういった動きに水をささないか、人材は育っているかというところだろう。

といったところだろうか。

もう一つ必要なのはトップに人を得ることだろうか。自由競争の時代にはいり、競合先のまねをしているだけでは違いを出すことは難しくなっている。個々のビジネスのリスクを良く見極めながら機動的に経営資源を振り向ける能力がトップには要求されている。そのようなトップやそれを支える経営幹部は育っているだろうか。

この関係では、リスク管理と収益管理の重要性を挙げることも可能だろう。

証券界商品を例に挙げれば、これを相当規模購入していた金融機関は、販売した投資銀行・証券会社の説明を鵜呑みにしていなかったか、状況が変化した際に必要なアクションを取れるリスク管理体制は出来ているか、リスク管理について普段から状況を把握し自由に議論するシステムや雰囲気はあるか、等々の点である。証券化ビジネスの直接の担当ではないCiticorpのRubin副会長ですら、昨今のシティバンクの経営不振への責任を問われているのである。同じような目線で日本の金融機関をみたらどうなるだろう。証券化商品で大幅損失を計上した金融機関が、今後はリスク管理体制の強化を図ります、といった説明で果たして株主は納得できるものだろうか。

加えて強調したいのが、利益よりも損失をまずレポートするという透明性の高い経営である。