人民元 「早期改革が中国に有益」米の識者に情勢を聞くMSN-Mainichi INTERACTIVE 海外

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人民元
「早期改革が中国に有益」米の識者に情勢を聞く

 米財務省は17日、中国に半年以内の人民元改革を求める報告書を発表した。中国政府の反発は必至だが、米国内でも議会や産業界から、報告書の内容が生ぬるいといった批判が早くも出ている。米国の対中圧力が一段と強まるのは避けられない情勢だ。早期改革を主張する米国際経済研究所のモーリス・ゴールドスタイン上級研究員に改革が必要な理由や改革による影響を聞いた。【ワシントン木村旬】

 −−なぜ人民元改革が必要なのですか。

 ◆中国経済に有益だからだ。中国企業はドルでの借り入れを拡大している。「将来の人民元切り上げでドルが相対的に安くなった段階でドルを返せばいい」と考えている。だが、それではインフレが悪化する。中国の成長率は高すぎ、持続不可能だ。早期の人民元切り上げは成長率を抑制する。

 −−米国は巨額の対中貿易赤字に不満です。

 ◆中国だけが人民元を20%切り上げても、米経常赤字(04年で6659億ドル)は200億ドルしか縮小しない。米国の輸入額に占める中国の比重は約10%で、各国の貿易額を加重平均したドルの実効レートを2%しか引き下げないからだ。人民元切り上げと連動して、円などアジア通貨が20%上昇すれば、米経常赤字は800億ドル縮小する。

 −−改革はどのように進めるべきですか。

 ◆最初は人民元を25%切り上げ、ドル・円・ユーロに分散して連動させる「通貨バスケット制」に移行する。ドルが対円で大きく変動しても、人民元への影響は抑えられる。数年後に中国の金融システムが強固になった段階で、変動相場制に移行すればいい。

 −−中国は改革時期を慎重に探っています。

 ◆年内に改革するだろう。だが、人民元切り上げを小幅にとどめることが心配だ。小幅なら、「さらに切り上げがある」とあてこんだ投機資金の流入を招いてしまう。

 −−議会は対中制裁法案を提出しています。

 ◆賢明な政策ではない。中国製品に報復関税を課しても、米国の消費者は他の安い輸入品にシフトするだけだ。中国も米国製品に対抗措置を打ち出すことが予想され、保護主義の懸念が広がって、株式市場などにも悪影響を及ぼす。

毎日新聞 2005年5月18日 20時42分