米国 格付への依存

毎日エコノミスト2月19日号 三国陽夫 氏 格付に過度に依存した米金融行政の問題点

  • 格付会社は、今回不良債権になる確率の極めて高いサブプライム・ローンを原債権として組成される仕組み債を格付する際に、住宅価格の下がるリスクを検討したかどうか。ただ、20-30年にさかのぼって統計を見ても地価は上昇傾向をしめしている。
  • 仕組み債は専門の投資家を対象とする私募であり、企業内容開示制度の対象となっていない。従って、投資家は、信用分析を行うために原債権などの必要な情報を入手することが難しい。これは、公開企業による公募社債の格付については企業の財務内容と社債契約の内容が開示されており、誰でも閲覧できるのとは好対照。
  • 仕組み債の信用リスクの測定にあたっては、格付会社が開発したコンピューターモデルが利用されている。モデル自体は公開されているが、多くの投資家が複雑なコンピューターモデルを理解して利用するのは容易ではない。一方、社債の格付では財務分析が行われるが、手法の基本は20世紀初頭に確立され広く理解されている。
  • 米国SECは、全米で認知された統計格付機関(NRSRO)として、特定の格付会社を法律に基づき登録している。法令や規制により、多くの金融機関や機関投資家が行う投融資の基準に格付が用いられる。格付は一つの意見を超えた存在であり、このような格付への過度の依存を招く金融行政は大きく見直されることが必要との議論が起こっていると説明。

もともと格付会社が受け取る格付手数料を、投資家ではなく、債券の発行体が支払っているところに最大の問題がある。この点も米国では議論されているようだ。売り上げを高めようとすれば債券の発行体に不利なことはできなくなる。そういった格付に投資家が依存しきっているというのもおかしな話。民間の金融市場メカニズムがきちんと機能していない一例だが、良い解決方法はあるものか。