アーミテージ 米の外交戦略 ソフト重視に針路を

いつになく日本の読者を意識した書きぶりなのはなぜだろう。
そして、この多くは、日本自身が取り得るリーダーシップでもあることに気付かされる。
読売朝刊所載。

2007年11月のCSISスマート・パワー委員会のレポートに言及している。同氏はこの共同議長。

テロは確かに真の脅威だが、アル・カイーダなどは大量破壊兵器を持たない以上は、かつてのナチス・ドイツやソ連のように米国の存立にかかわる脅威にはならない。テロ分子が米国を負かしうるとすれば、それは、米国自身がテロにおびえて自縄自爆になったときだけ。

今日必要なのは、ハードの強制力とソフトの魅力の均衡を図る路線。米国は依然として世界最強だが6年間の戦争で疲弊し建て直しを要する。これに加えて、ハードパワーを土台とするだけでは長期的な米国の目標を達成出来ない。米国は、よりスマートなパワーとなる必要がある。地球規模の善に投資し、各国の民と政府が希求しながらも、米国の指導力なしには達成できないものを提供することが必要。そのために次の5の死活的に重要な分野に焦点をあてなおすべき。

1.同盟や提携関係、諸制度を活性化する(何か新しい課題がおきるたびに改めて総意の構築をはかるのではなく、直ちに危機に対応したい)
2.地球規模の事象に関する閣僚級のポストを新設する(米国の利益と世界中の人々が求めるものを合致させる等のため)
3.政府の外側に新たな非営利機関を設立する(民間外交に再投資し、人的な紐帯を構築するため)。また、フルブライト奨学金計画への年間拠出金も倍増させる。
4.WTOの内部に「自由貿易の中核諸国」をもうける交渉を行うこと。
5.技術と革新により多く投資することによって、気候変動とエネルギー不安への対応の先頭に立つ(ことを検討する)。

米国の指導力の回復には、構想以上のものが必要。それは、遂行責任と説明責任。しかし、現米政府には手持ちが乏しい。そのためには、米政府内の組織と連携と予算措置のありかたを再評価(再検討)が必要。ソフトパワーとハードパワーの道具の統合に反対する勢力もある。

競合する優先事項の間に折り合いをつける
現場の組織の裁量権と資源を写し、結果に責任を負わせる
民間部門と市民社会の中にある膨大な資源をくみ上げ活用する道を探す。

スマートパワーは、米国の持つ問題をすべて解決しないが、正しい方向への第一歩となろう。米国が常に得意としている伝統的分野に立ち戻って焦点を当てることが必要。その重要性は、日本の人々なら理解、評価してくれよう。